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【題 名】環境と共生する建築--学校・地区会館・幼稚園・障害者施設・病院・住宅-- |
・北国に建つ外断熱工法の幼稚園_____page64 まこまない明星幼稚園 ・石壁にみる記憶と室内気候_______page122 |
北国に建つ外断熱工法の幼稚園 東京オリンピックの年に建てられた旧園舎が老朽化して、建て替えられることになった。ここは真駒内団地の一角。郊外住宅団地のはしりだったこの街も、戸建住宅やアパートの建て替えが始まって装い新たな建物が目につくようになった。それでも新興住宅街のそれとはちがって風格と落ち着きのあるたたずまいを感じさせてくれるのは、豊かに育った樹木たちのお陰であるに違いない。
(小室雅伸) |
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北海道の寒さは何より建築物そのものにとって大敵でありつづけた。大地の凍結による建造物の凍上倒壊、氷結する雨水、雪によるすがもりやコンクリート建物の破壊、北海道の建築学はそれへの対応をテーマとする長い歴史である。断熱材の一般化とたぶんそれにサポートされるように始まる北海道独自の生活の価値の追求が、北海道のための室内気候を提示し始めたのは、ほんの数年前からのことである。 コンクリートという蓄熱性能の高い材料、それによる躯体の外側のすべてを断熱材でくるみ、木材と金属板でそれをカバーするという手法は、そうした「北海道のための室内気候」を求めることにより必然的に選択された説得力のある表現である。 「北海道の建築にかかわる、人々は東京を向かず、むしろヨーロッパに直接注目している」と聞かされたのは数年前のことであるが、この幼椎園をデザインした建築家が当然のようにここで用意する設備−トリプルガラスの木製建具、外断熱と空気層に守られるRC造の躯体は、北欧や北米のディテールがこの国に短期のうちに根付き、十分にこなれた手法になりつつあることを示している。 「開く建築」であるか「閉じる建築」であるかを問えば、当然建築は開くことができるものでなければならない。しかし建築が開くことをその性能とすることだけが、そのテーマであるなら、これほどシンプルな話はあるまい。閉じたいときにいかに閉じるか、これが難しいもう一つの主題である。 (野沢正光) |
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石壁にみる記憶と室内気候 札幌近郊で採れる軟石を使った建築は住宅をはじめ蔵や倉庫、サイロなどに見ることができる。小樽の倉庫群は大規模な例である。
●構法 まず石壁だけを残して木造部分をそっくり取り除き、その内側に断熱材を吹き付けた。次にベタ基礎床をコンクリートでつくり、コンクリートブロックを積み上げ、スラブを石壁共々打って二重壁で1階部分を囲めた。2 階は、60°の角度の三角トラスを連ねてワンルーム空間をつくり、安価で耐久性の高い金属板ですっぽり覆うことにした。ラフな石壁と対比する質感を与え、数十年の時間を刻み込んだ石壁の迫力にバランスするボリュームを与えることが狙いであった。
●断熱 1階は石壁に発泡ウレタンを50mm吹き付けた外断熱。厚くするに越したことはないが、外形が決められた中につくるから居住面積との兼ね合いで決めている。二重壁の外断熱のときには、内側の構造壁に断熱を施し、通気層を設けて外壁を設けるのであるが、この場合は初めに外壁があるのでこうなる。石壁を浸透する雨水の防水も発泡ウレタンは兼ねている。
●設備 高い性能を持たせた建築は大げさな設備は不要である。少々のことは高い断熱性能とコンクリートブロックの蓄熱性がカバーしてくれる。1階に設けたただ一つの石油ストーブでこの家の暖房はまかなわれている。 (小室雅伸) |
この住宅の姿の良さ、美しさはどうだ。この美しさ、姿の良さは何によるのか。その一つは室内気候のための配慮という根拠により、もう一つは記憶の保存という根拠によっている。過去この敷地にあった住宅の使用に耐える外皮は、新しい住宅にそのままその時間をつなぐ。住宅のシルエット、そして内部空間は明らかに過去のものではないが、この家には長い時間を連続する空気=気候がある。以前と全く異なるシルエットもむしろ、建築家の自信あふれる風景へのレスポンスであり、これ以上の案はない。条件を幅広く解くことによって現われる必然としての形態こそ、建築の本来の冒険であることをこの住宅はすがすがしく我々に教える。 (野沢正光) |
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