約60mx23m、天井高8.4mのクリーンルーム製造工場と2階建の事務棟
から成る。
設計のテーマは「最小限の空調設備=最小限のエネルギー消費で適切な作業環境
を獲得する」。
最低気温は−10℃近く、最高気温が40℃にも近い気候の場所で1200uも
の大空間を”従来の常識的工場建築”の造りのままに空調設備を設けるととんで
もないランニングコストがかかる上にそれに見合う快適さは確保できない。
効率的・経済的な空調を行うには大きく変動する外気の影響をできる限り遮断す
ることが最重要。とにもかくにも断熱を強化することが第一優先であり、性能の
良い装置を探すことではない。
この建物では、100ミリのALC板外壁にドイツSTO社の100ミリ厚の外
断熱工法を用い、天井には400ミリ厚のロックウール断熱材を施工。
これら断熱工事費は増加するが、1200uの大空間を10HPのヒートポンプ
パッケージエアコン(冷房能力25KW、暖房能力28KW)2台のみに削減さ
れた。これは、断熱なしの一般的な作りに比べて1/6程度の設備である。
2008年8月の建物全体(照明などすべてを含む)の電気料金は約30万円。
グラフ2が示すように工場内室温を23℃に保っての費用である。
冬季2月が約27万円。室温測定データから暖房を停止し日曜日をはさんでの温
度低下は4℃以内で室温16℃以上が保たれている。
このように劇的なランニングコストの削減はすぐに知ることができるが、さら
に劇的なことはこの先に必要になる設備機器更新時の出費である。装置の台数が
少なければ数百万円単位で違いが出てくる。
断熱材にはランニングコストはかからないし寿命が来て更新の必要も無い。
初期投資を断熱工事にあてるか、設備機器にあてるか、長期的な視野で見直すこ
とで合理的で快適な工場建築造りは特別のことでは無く実現可能である。
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