鉄骨造に波板スレートの壁・鉄板屋根は工場建築の定番。
せいぜい波板スレートが少しは小奇麗な金属サイディングに変わろうと、夏の猛暑と冬の底冷えに耐えねばならない
「キューポラのある街」の作業環境にいまだ変わりはない。
圧倒的多数の中小零細企業町工場の技術に支えられてこの国は戦後の復活を成し遂げてきたというのに。
あれから40年、小百合さんはめでたくクリーンで空調完備の「近代的大企業」に転進できたけど、
モノ作りの作業環境は、温暖化と高密度化で40年前のそれよりもさらに悪化しているのである。
この会社は金属精密加工工場である。少しずつ大きくなって2ヶ所、3棟の施設を使っての運営は何かと効率が悪くなった。
それよりなにより、真夏には40℃を超える低温サウナ状態の作業環境を何とかしたい。
とはいえ、空調完備した工場のランニングコストを聞くと到底手を出せるものではない。
やっぱり、気休めのスポットクーラー支給で耐え忍ぶ以外に無いか、と。
縁があって相模原の工場を北海道の事務所が手がけることになった。手法は、これまで蓄えた外断熱が基本。
さらに屋上緑化の実測研究成果を取り入れて徹底的に負荷を抑制し最適・最小設備によって、
一般的な工場の定説ランニングコストの1/5〜1/6とはじき出した。イニシャルコストも定説のあたりを下回る。
もう一つ、取得した土地は2つの建物のおまけ付き。「解体費に金かかる」の周囲の雑音に躊躇してたが、
築20年の2階建の方はこの計画にぴったりで、いわゆるコンバージョンでそっくり使い続けることにしたから一石ニ鳥。
工場面積不足分のみを増築。で、それは昨今の鋼材高騰・納入不安定で早々にRC造に決定。
工場建築は鉄骨造が安い、の定説を覆す事例がまた一つ増える。
RCの巨大な熱容量の効果も合わせれば余程の巨大工場で無い限り新築するならRC造と確信してる。
今年の夏を最後の酷暑体験として我慢してもらい、10月には画期的な環境での体験が始まる。 (小室雅伸)
BEFORE

手前のは解体。奥の2階建をそっくりコンバージョン
AFTER

100ミリ外断熱、全面屋上緑化、トップライトで昼間照明削減、クールチューブで夜間冷却換気。
窓はLow-Eペアガラスに2階の事務所部分はダブルLow-Eトリプルの国内最高性能を用いる。
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