東京都町田市に建つ歯科医院併用住宅で、1階が医院、2・3階が住宅になる。
北海道出身の施主は、町田に移り住んでこちらの建物に驚いた。冬は寒くて結露だらだら、夏は灼熱地獄の貧しい性能にホトホト呆れてしまった。で、新築に際してネット検索で私と出会うことになり、外断熱建築の設計となった。
駅に近い商店街の並びに建つ。両隣を中層ビルにはさまれた敷地で、ほぼ10m角の本体に階段室を突き出して、医院玄関と住宅玄関を分けた構成。
2・3階の住宅部分はコの字型平面で、中央にパティオを設けたコートハウス型だから、ファサードの窓は小さく住宅らしくはない。
ここでは、断熱の技術をもっぱら夏の暑さ対策に向けている。外壁は「蘭越の住宅」で試みたSTOの外断熱工法を採用し、そして何よりも日射の制御に注意を注いだ。だから、両隣の建物はうっとうしいというよりも遮蔽スクリーンとして有難く思えるし、パティオからの採光を主にしていることも具合が良い。窓はいつもの木製トリプルガラス入り。
屋根の断熱(遮熱)は熱帯地方では極めて重要だが、工費のバランスで置屋根あるいは緑化屋根まではできなかったが、これも両隣のビルがほどほど日影を落としてくれるから少しは助かると思っている。
設備は一般的な空冷ヒートポンプ暖冷房エアコンであるが、日射取得や内部発熱を考慮すれば暖房負荷はほとんどゼロに近いから冷房負荷で装置のサイズが決まる。そこで、外断熱による蓄熱(蓄冷)性を利用して、安価な深夜電気をできるだけ使う運転方法でランニングコストダウンを試してみる。また、床下ピットを入気チャンバーにしていくらかの地熱利用を図った換気も試す。
都市の中では、環境制御にどうしてもエネルギー消費を伴わざるを得ないが、それをいかに削減し装置依存から遠ざかることが重要である。キーワードは断熱と日射制御。
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